Chapter 8

窓の外では心地よい風が吹いている。
ジェームズとリリーは黙っていた。ハリーも黙っている。

何分経っただろうか。その沈黙をジェームズがやぶった。

「・・・未来のことを聞くのは危険なことだって分かってる。
だけどハリー、それはどういうことなのかい?」

蒼い目は、じっとハリーを見つめている。




僕はどうすればいい?

ここまで話してしまってもうどうしようもない。

でもパパは未来を・・・今を知りたがっている。きっとママだって。

もし僕がぜんぶ話して未来が変わってしまったら?

僕は今も両親と一緒に暮らしてるんだろうか・・・





「おやおやポッター親子や。こんな時間に談話室で家族会議かの?」

 びくっ

「「「ダンブルドア先生?!」」」

「どうして校長がここへ?何か・・・あったんですか?」

リリーが顔を強張らせて言った。

「校長は何でもお見通しじゃよ。」

ダンブルドアは優しい笑みを浮かべている。

「「「・・・・・・・・・・」」」

「お見通しと言っても
 この時がくるのは、そろそろじゃと思っていたのでな。」

「僕たちが何のことを話していたかお分かりですね?」
ジェームズがやれやれと言った風に笑う。

「さよう・・・のぅ、ジェームズ、リリー。未来のことを聞くことはとても危険じゃ。
もしかしたら未来が変わるかもしれん。じゃが君たちはそれでもいいと思っているのかね?」

「よく分かりません。ハリーがペチュニア・・・私の妹と暮らしていると聞いて・・・
なぜ私とジェームズと暮らしてないのかが気になって・・・たぶんジェームズも同じです。」

「はい・・ハリーの様子がなんだかおかしいし・・・
ダンブルドア先生。やっぱり聞いてはいけないのでしょうか?」


ダンブルドアはハリーを見た。その目は何かを優しく見守るような目。
ハリーはまだ涙がとまっていない。ふとダンブルドアは優しく目を細めた。


「いいじゃろう・・・じゃがこれで未来が変わってもわしは責任はとれんぞ?・・と言っても
 実はな?魔法省にはもう許可をとってある。わしが全力をつくして頼みこんだのでな。
今夜はその事を教えにここへ来たんじゃが・・・タイミングがよかったの?
・・ハリー・・・全部を話してごらん。それで14年間の思いが少しは晴れるじゃろう。」


ハリーは信じられないと目を大きく見開いた。

あの魔法省が?そんなことがありえるのだろうか。

ダンブルドアを見ると微笑んでいる。

ジェームズとリリーも少々ダンブルドアの言葉に驚いたようだったが、
今はハリーを心配そうに見つめている。

ハリーは全てを話すことにした。ヴォルデモートのことも・・・何もかもを。
もちろんシリウスのことも。


「僕はね、さっき言ったとおりペチュニアおばさんの家で暮らしてるんだ。」

「・・それは・・・なぜなの?」リリーは不安そうにじっとハリーを見つめる。

「・・・パパもママもいないから。2人とも僕が1歳のときにヴォルデモートに殺された。」


((ごくん・・・))とジェームズとリリーの唾を飲み込む音が、静まり返った談話室にひびく。



「パパは勇敢にもヴォルデモートに立ち向かった。ママと僕を守ろうとして・・
だけど・・・だめだったんだ。殺された。それでママも僕をかばおうとして殺された・・・」

パパとママは信じられないといった顔をした。ママは口に手をあてて涙を流している。

「それで・・ハリーはどうしたんだい・・・?」

ジェームズの声は震えていた。

「残された僕は・・・生き残ったんだ。額にこの傷をのこして。それでヴォルデモートは
不思議にも姿を消してしまった。僕に向けた呪文が跳ね返ったんだ。」


そこでまた沈黙がながれる。誰もしゃべろうとする者はいなかった。
それぞれが黙りこんで震えている。


そこでダンブルドアが口をはさむ。

「この魔法界でハリー・ポッターを知らん者は1人もいない。
あのヴォルデモートの手から生き残った・・・しかも1歳の赤ん坊が・・・
その日はヴォルデモートが消えたといってお祭り騒ぎじゃった。」

「・・でも・・・なぜ僕たちが狙われたのですか?」

「そのころポッター家は相当の力をもっていた。ヴォルデモートが自分の仲間にしたかったのじゃろう。
しかし、ポッター夫妻がおとなしく自分の仲間にはならんと思ったのじゃ。
そこで・・・ポッター夫妻の学生時代の親友を手先につかった・・・」


「いったい誰を・・・?いったい誰をなんですか?!ダンブルドア?」

リリーの目からはポロポロと涙がでている。
目も真っ赤に充血し、ぎゅっとハリーを抱きしめる。

ダンブルドアが再び、ハリーに目で合図した。




「ピーター・ペティグリューなんだ」




「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」


「ピ・・ピーターが?・・・まっさか!そんなことあるわけないよ!?
ピーターが僕たちのことを裏切れるはずがないさ!!」

ジェームズは半分自分に言い聞かせながら言っているようだった。
顔は冷や汗がでている。

「だけど・・・ピーターは今死んだことになってる。
違うパパとママの親友がアズカバンに行ったんだ。だけどその人は無実で・・・。
ピーターは勇敢にもその人を倒そうとして、死んだことになってるんだよ。
だからその人はピーターを殺したといった罪も被せられてる。
そのことは、僕とロン、ハーマイオニー、ダンブルドアしか知らない。
ファッジに言ったんだけど信じてもらえなかった・・・」


「し・・信じられないわ?そんなこと・・・アズカバンに行った私たちの親友って・・・?」



「シリウスさ」





「シ・・・リウ・・ス?」


ジェームズとリリーは頭をがっくりと下に垂らす。
そうとうショックが大きいことはハリーにも分かっていた。
自分たちはもう死んでいて、
自分の親友に裏切られ、また自分の親友がアズカバンに・・・



ダンブルドアが口をひらく。


「シリウス。隠れとらんで出ておいで。」

3人がばっとその方向を見ると、シリウスがゆっくりと影からでてきた。
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